内閣はぼくらの手の外:官邸HPの三権分立説明図は間違っていたのか?

政治用語bot管理人

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政治
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・官邸HPにあった三権分立の説明図が炎上したということがあった。

・しかし、炎上時に叩かれていたところは、別に間違ってはいない

・もっと根本的なところで間違ってるんだけどね。


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官邸HPの「三権分立の説明図」を巡る炎上騒ぎ

先日、こういう記事が出た。

 首相官邸がホームページに掲載した三権分立の説明図を1998年以来、22年ぶりに修正した。主権者である国民より内閣の方が上位にあるような部分に関し、会員制交流サイト(SNS)上で「内閣主権」「内閣が国民を縛っているようだ」と批判が殺到し「炎上」。野党からも追及され「監視の意図はない」として6月中旬に差し替えた。

官邸HP、三権分立図を修正 「内閣上位」にネット炎上「国民縛っているようだ」

書いている途中に有料記事になってしまったので、記事内容を要約しよう。

首相官邸HPにあった三権分立の説明図(1998年から掲載)において、国会には国民(主権者)から選挙の矢印、裁判所には国民から国民審査の矢印が出ている。一方、内閣についてはそれらの逆、つまり「内閣から国民に行政の矢印が出ている」状態であった。

これに対し会員制SNS(Twitterのことであろう)で反発が起き、国民民主党からの指摘も受け、最終的に今年6月中旬、「国民から内閣に世論の矢印が出ている」ものに差し替えられた、ということになる(毎日新聞: 2020.7.26)。

理解のために、記事の説明図を引用しておく。

ついでだが、炎上時に引き合いに出されていた衆議院HPの三権分立図も載せておこう(衆議院HP)。

この「炎上」騒ぎは俺自身もチラッと目にしていた。検察庁法改正案の炎上と同時期だったように記憶している。時期が時期だけに過敏になっていたのだろうが、元からあったものを「『私が立法府の長ですから』と言い放ってしまう首相ですから」のように評してしまう例があったこと(毎日新聞: 2020.7.26)はいただけない。

前置きが長くなったが本題に移ろう。そもそもの話、「内閣から国民に行政の矢印が出ており、国民から内閣に世論の矢印が出ていない」説明図は、間違っていたのだろうか?答えはこうなる。「『そこは』間違いではなかった」。意外と思われるかもしれないが、日本が採用する議院内閣制では、内閣(行政府)が世論を受けて判断するということは想定されていないのだ。次節で解説しよう。

議院内閣制と世論:合わない臓器は移植できない

周知の通り、日本は議院内閣制を採る国家である。議院内閣制とは、立法府(議会)の信任によって行政府(内閣)が成立する仕組みである、という説明に、異議を差し挟む者はいないだろう。これに対比されるのは大統領制、すなわち、有権者の直接的信任によって行政府(大統領)が成立する仕組みである。両者の違いは、行政府を信任する主体が立法府か、有権者か、というところにある。

さらにこの違いを深掘りしてみよう。「行政府を信任する主体が立法府」であることは、「有権者→立法府→行政府」という信任する者―信任される者の1本の線が描けることを意味する。一方、大統領制ではこれが「有権者→立法府」と「有権者→行政府」という2本の線として描かれる。議院内閣制と大統領制の具体的な部分は、これらの線を骨組みとし、肉付けしたものとして理解できる。

さて、そのような前提で考えると、「国民から内閣(行政府)に対して世論の矢印が出る」というのは、まずいことになる。議院内閣制における「信任する者―信任される者」とは違う線が一本引かれてしまうからだ。しかもその線は選挙という明確な制度に担保されることのない、とらえどころがなく、曖昧なものである。「有権者→議会→内閣」の一本の線を前提にして構築される議院内閣制に、大統領制的な「有権者→内閣」のあいまいな線を導入することはできない。丁度臓器移植の失敗のように、合わない臓器では腐り落ちるか、逆に身体が多臓器不全を引き起こして死に至るのだ。つまり、「内閣から国民に行政の矢印が出ており、国民から内閣に世論の矢印が出ていない」図は、極めて正しい。

幸いにも、今のところ日本では内閣は腐り落ちてないし、議院内閣制も死んではいない。ただし、それは世論が無視されているからではない。少なくともある程度、国会が世論を吸収しているからである。世論が政治に反映された、と言ってよさそうな最近の目立った事例だと、特別定額給付金やら、検察庁法改正案がある。ニュースを読み直せば、両方とも、政府・「与党」の合意によって決定されたことがわかるし、問題提起は主に野党が国会で行っていることもわかるだろう。

議院内閣制は三権分立していない:×抑制と均衡 ○連携と協力

ただし、先に「『そこは』間違いではなかった」と書いたように、官邸HPの三権分立説明図は、別のところで間違っている。さらに同じ理由で、衆議院HPの三権分立図も間違っている。というよりも、「三権分立図を載せていること自体」が間違っている。どういうことか?

三権分立とは、国家機能(あるいは権限)を立法・行政・司法の三つに分け、これらを互いに独立した主体(立法府・行政府・司法府)に担わせて相互抑制・均衡を図る、という仕組みのことを言う。

ここで「おや?」と思わないだろうか。

思わなかった人のために、前節で書いたことを再確認しよう。「議院内閣制とは、立法府(議会)の信任によって行政府(内閣)が成立する仕組みである」。もっとわかりやすいように、この説明の対偶をとってみよう。「議院内閣制とは、「立法府(議会)の信任によら『なければ』行政府(内閣)が『成立しない』仕組みである」そう、議院内閣制では、行政府は立法府に対して相互独立などしていない。いわば行政府は立法府に隷属する下部機関である。内閣が独自に動けるのは、議会による信任を受け続けている限りでしかない。

内閣には議会の解散権という抵抗手段も用意されているものの、解散権を行使したところで、総選挙を経た新議会で信任を受けなければならない以上、議会から独立しているとは言えない。いや、見方を変えれば、独立していないからこそ解散権を持つとも言える。ひとたび議会の信任を失った内閣は、解散総選挙に打って出る他に自らの存立を守ることができない。内閣と議会は「相互」抑制・均衡などしていないのだ。

むしろ議院内閣制を特徴付けるのは、内閣と議会(特に与党)の連携と協力である。先に挙げた特別定額給付金の例もそうだ。世論は議会を通り、与党を通って政権にたどり着く。また他方で、内閣は議会を招集するし、招集された議会には内閣提出法案が送られ、与党の賛成によって成立する。もしも内閣と議会がそれぞれ独立しており、相互抑制・均衡しているのなら、内閣が議会を招集するとは一体どういう理屈になるのか説明づけることは不可能であるし、内閣提出法案など存在すること自体がおかしいはずではないか。実際にそこにあるのは、ときに慣例化され、制度化されることもあるような、高度に複雑な連携と協力の技術である。この意味で、三権分立図、特に官邸HPや衆議院HPにあるような、国民を立法・行政・司法が綺麗に三角形を成して囲む三権分立図を描くこと、それ自体が間違っている。内閣と国会はくっついていなければならないのだ。


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(N国党や、○ん○ん氏などから訴訟をちらつかされているため)

まとめに替えて:行政は世論を反映するべきとしても・・・。

以上、官邸HPの三権分立図について検討した。今回の議論からすると、残念ながらこれに関する炎上騒ぎは、炎上させる方が間違っていた、と言わざるをえない。正確には、みんな間違っているということになるのだが。

行政府が世論を反映しているべきだ、だとか、行政府から国民に向けて一方的に矢印が向いていることに違和感がある、というのはわかる。政治に国民の意思が反映されてほしい、というのは民主主義を信じ発展させることを望むのであれば、当然の期待である。そのような期待を受けて、公聴会や審議会、パブリックコメントといった仕組みができているのだ(俺自身はこれらが「国民の意思を反映する仕組み」なのかは疑問だけれども)。

しかし、そのような期待を持ったならば、その期待を満たすための道具とその仕組みについても考えなければならない。議院内閣制においては、国民から内閣に矢印は伸びないけれども、国民から議会には伸びている。議会から内閣にも伸びている。そういう仕組みの道具がある。「内閣は僕らの手の外」にあるのだが、道具を使えば届く程度に近くにはある。もちろん、もっと使いやすくて便利な道具もあるだろうから、俺はそっちを探そうと思う。

最後に、不慣れながら、今回の話を踏まえた図を自分で描いてみたので、載せておく。

補足:図書紹介

本記事の途中に「信任する者―信任される者」という言葉を用いたが、これは専門的な言葉で「委任―責任関係」という。「委任―責任関係」を用いた著作として近年出版されたものとして、『代議制民主主義:「民意」と「政治家」を問い直す』(待鳥 2015)をという新書を挙げておこう。というよりも、本記事での説明の多くはこの待鳥の議論に負うところが多いため、挙げないわけにいかないのだが。ちなみに、この本は新書としては読みにくい部類である。

参考文献

飯尾潤(2019)『現代日本の政治』放送大学教育振興会。

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川人貞史(2015)『議院内閣制』東京大学出版会。

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待鳥聡史(2015)『代議制民主主義:「民意」と「政治家」を問い直す』筑摩書房。

代議制民主主義 - 「民意」と「政治家」を問い直す (中公新書) | 待鳥 聡史 |本 | 通販 | Amazon
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毎日新聞(Web版)(2020.7.26)「官邸HP、三権分立図を修正:「内閣上位」にネット炎上「国民縛っているようだ」」https://mainichi.jp/articles/20200726/k00/00m/010/129000c(最終閲覧日2020年8月1日)※共同通信社の配信記事を元にしたもの

衆議院HP「三権分立」

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/kokkai/kokkai_sankenbunritsu.htm(最終閲覧日2020年8月1日)



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コメント

  1. 今日からパ翼(まじ天使) より:

    「なぜ日本のジャーナリズムは崩壊したのか」
    望月衣塑子/佐高信

    そんなんお前みたいな馬鹿がジャーナリストを名乗っているからだって
    わかるほど賢いはずもないか sigh

  2. トリ食えば名無し より:

    世論てなんなの
    マスゴミを世論とは認めんぞ

    • トリ食えば名無し より:

      現実的なこと言うと
      平素は業界団体のような各種の圧力団体を通して
      国民各層の意見が内閣(を頂点とする行政機関)に反映するよね

      その結果としての更迭や内閣改造といったものが
      選挙を待たずに素早く民意を反映しようとする動きと言える

      マスコミは国民への情報インフラなので、この意味で世論とは直結しないよ

  3. 今日からパ翼(まじすか天使) より:

    世論でふらつく内閣じゃ役に立たんがな

    • 今日からパ翼(まじすか天使) より:

      4-5月は給付金を出すの出さないのと観測気球ばかりあげて
      方針定まらず。世論の動向ばかり気にして
      最悪だった

    • 今日からパ翼(俺たちは天使だ!) より:

      世論に動かされる=軽佻浮薄 ちゅうことやな
      第一 そんなもんは法制度として存在しない

    • トリ食えば名無し より:

      あ、失礼 それ書いてたな
      ちょっと長いので全部読んでなかった

    • 今日からパ翼 より:

      大変失礼をば

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